【過払い金】免責者から債権回収として不動産を奪えるか?

支社
控訴
東京

主文

本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立て。

控訴会社代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人らは控訴人に対し別紙第一、第二目録記載の物件を引き渡せ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決と仮執行の宣言を求め、被控訴人らは、主文同旨の判決を求めた。

第二、当事者双方の事実上の陳述。

一、控訴会社代理人は、請求の原因として次のとおり述べた。
(一)訴外中小企業金融公庫(以下訴外公庫という)は、昭和三二年九月一〇日、訴外深田木材株式会社(以下訴外更生会社という)に対し、設備兼運転資金として、金一、〇〇〇万円を貸し付けた。
その弁済方法は、昭和三三年三月一〇日を初回とし、毎月一〇日限り、金三四万円宛(最終回は金一四万円)三〇回に分割して支払うこととし、右分割弁済の履行を怠つたときは期限の利益を失う約束であつた。
訴外更生会社は昭和三二年九月一〇日その担保として、訴外公庫のため別紙第三目録記載の不動産(宅地及び工場)に順位第一番の抵当権を設定し、更に同日訴外公庫との間で、同第一目録記載の物件(工場備付の機械器具)について譲渡担保契約を締結し訴外公庫にその所有権を移転した。
そこで訴外更生会社は、同日右物件を占有改定の方法で引き渡し、訴外公庫から同日以降その無償使用を許された。
訴外更生会社は、昭和三二年一一月一六日、訴外公庫との間で、右債務を担保するため、追加として別紙第二目録記載の物件(工場備付の機械器具)について譲渡担保契約を締結し、訴外公庫に所有権を移転し、同日前と同様その引渡しを終え、その無償使用を許された。
これらの物件は、訴外公庫の請求があり次第、訴外更生会社は返還のため引き渡す約束であつた。
(二)訴外更生会社は、昭和三四年八月一〇日分からの分割弁済金を支払わなかつたので、期限の利益を失い、このため訴外公庫は、そのとき、訴外更生会社に対し、貸付元金六六〇万円、及び利息、損害金との合計金七一四万四、三四八円の返還請求権を取得した。
訴外公庫は、昭和三五年一月三〇日、控訴会社に対し、右債権を、前記抵当権と各譲渡担保権つきで譲渡し、同年二月五日付、翌六日到達の書面で訴外更生会社にその通知をした。
そこで、控訴会社は訴外更生会社に対し、本件譲渡担保物件を無償で使用させ、控訴会社の請求あり次第訴外更生会社はその返還をすることを約束した。
(三)訴外更生会社は、昭和三四年六月二六日、京都地方裁判所舞鶴支部に対し、会社更生手続開始の申立てをしたところ、同裁判所は、同年一二月二五日右申立てを許容して更生手続開始決定をし、被控訴人らが訴外更生会社の更生管財人に選任された。
(四)しかし、本件譲渡担保物件は、控訴会社の所有財産であり、訴外更生会社の財産に属しないから、更生手続の開始は、控訴会社の訴外更生会社に対する本件譲渡担保物件の取戻権には、影響がないと考える。
その理由は次のとおりである。
(1)控訴会社は、本件譲渡担保物件の完全な所有権を取得しており、第三者に対する対抗要件を備えた、いわゆる「強き譲渡担保権者」である。
訴外更生会社は、債権の弁済期日にその債務の弁済をした場合にのみ、担保の目的物に対し、いわば一種の買戻権的権利を行使することができるだけで、所有権者としての地位は全くない。
控訴会社は、訴外更生会社に債務不履行があれば、何時でも取戻しを求めることができるのである。
更生会社に対し、更生手続開始決定があつても、更生会社に属しない財産を更生会社から取り戻す権利は何らの変更ないし制約をうけるものでないことは、会社更生法六二条の明定するところである。
同条は、破産法八七条のいわゆる取戻権と同趣旨のもとに立法されたものである。
会社更生法は、譲渡担保権を、更生債権ないし更生担保権として取り扱うことをせず、届出でについての規定もない。
ということは、とりもなおさず、譲渡担保権は、会社更生法六二条により更生手続によらないで、何時でもその目的物を取り戻すことができることを裏書しているとしなければならない。
(2)同法一一二条は、更生手続によらない更生債権の弁済を禁じているが、同条は、控訴会社の本件譲渡担保物件の取戻権行使の妨げとならない。
けだし、所有権者である譲渡担保権者は、更生会社に対し、用益権、他物権などの拘束のない所有権者の地位と同一の地位にあり、後者が会社更生法六二条によつて取戻権を行使することができる限り、前者も同様でなければならないからである。
もつとも、前者の場合、取り戻した物件を処分し、その代金を債務の弁済に充当することにはなるが、これは所有権者としての権利行使の当然の帰結であつて、同法一一二条の関知するところではない。
(3)控訴会社は、さきにも述べたとおり、訴外更生会社に対する債権の担保として、不動産抵当権と譲渡担保権を有している。
ところで、右債権は、更生手続において、更生担保権として認められ確定されたからといつて、控訴会社の右取戻権を認めると、控訴会社が二重過当の優先弁済を受けることになり衡平を失し不当であるというのは当らない。
なぜならば控訴会社は、債権担保の手段として不動産抵当権と譲渡担保権を得ているのであるから、単に不動産抵当権だけしか得ていない債権者より、より有利な弁済が受けられても、それは、当然の帰結であり、何等衡平を失する不当のものではないからである。
控訴会社としては、本件譲渡担保物件の引渡しを得て、これを処分し、その処分代金を本件債権の一部の弁済に充当しようというのであるから、そのように弁済に充当したときは、更生担保権の額はその分だけ減少するわけである。
本件債権が更生担保権として認められたからといつて、控訴会社は不当な利得を得ようとする意図は毛頭ない。
(4)控訴会社の右取戻権の行使を許容すると、訴外更生会社は業務、更生計画の遂行などに支障をきたすから許されないとの議論も失当である。
なぜならば、そのような支障を生ずるならば、会社更生法五四条二号により、該物件の再譲受けを講じることができるのであるから、更生計画遂行を著しく困難にするとの非難は当らないからである。
(5)更生計画により、控訴会社の本件債権が、更生担保権として確定し認可されたことから、控訴会社は、更生担保権者として更生計画に従うべき義務があるのは当然である。
しかし控訴会社の本件譲渡担保物件の権利者としての地位は、これによつて何らの変更ないし制約を受けることはない。
譲渡担保権者は、一般の担保権者や債権者とは異なる地位にあるから、取戻権の行使について更生会社と何らかの合意が成立したならば格別、単なる更生計画認可決定によつてその内容が変更されるいわれはない。
会社更生法は譲渡担保権者について、その所有権者としての強力な地位に鑑み、取戻権を行使しないことを、更生手続開始前に、会社と譲渡担保権者とが合意して更生手続が進められることを期待し、それゆえにこそ、譲渡担保権を更生担保権(会社更生法一二三条)のらち外にし、更生手続とは別個に、当事者間の合意に委ねたまま特別の規制をとらなかつたものと解される。
同法二四一条二四二条が譲渡担保権に言及していないわけもそこにある。
ところで、本件では、更生手続開始前に、右のような合意がなかつた。
そうすると譲渡担保権者である控訴会社の地位が、本件債権が更生担保権として確定し認可されたからといつて、それによつて消長をうけないことは明らかである。
控訴会社は、更生計画により制約される更生担保権者の地位と、譲渡担保権者としての地位とを併有しているのであるから、前者に対する制約は後者に何の影響も与えない。
控訴会社としては、取り戻した物件を処分し、なお充当できない残債権額については、更生計画により割賦弁済を受けることになるから、この限度で更生計画に服するだけである。
(五)そこで、控訴会社は、本件譲渡担保物件の引渡しを受けて、その換価代金を被担保債権に充当するため、右物件の所有権にもとづき、被控訴人らに対しその引渡しを求める。
二、控訴会社代理人は被控訴人らの答弁に対する反駁として次のとおり述べた。
(一)被控訴人らの答弁事実中(二)の(1)の事実のうち、本件譲渡担保権を更生担保権として届け出たことをのぞき、その余の事実は認める。
(二)控訴会社は、本件譲渡担保権を更生担保権として届け出でたことはない。
(三)仮に、そのように届け出でたと認定されたとしても、この届出では法律上意義がない。
即ち、会社更生法には、譲渡担保権届出での規定がないし、いわゆる強い譲渡担保権は更生担保権となり得ない。
(四)控訴会社は、譲渡担保権を更生担保権として届け出でても取戻権の行使には、何らの影響がないと誤信していた。
したがつて控訴会社のした債権届出でという法律行為には、その要素に重大な錯誤があることに帰着し、右届出では無効である。
それゆえ、控訴会社は取戻権を行使できる。
(五)仮に右要素の錯誤の主張が認められないとしても、本件更生手続中の関係人集会において議決権を行使するに際し、譲渡担保権者には、単なる更生担保権者よりも強い議決権を与えるべきであるのに、更生担保権者として取り扱つた。
これは、会社更生法の根本理念である「更生計画の公正、衡平の原則」に反するから、更生計画は、本件譲渡担保権に対し効力を生じない。
会社更生法上、譲渡担保権を更生担保権として取り扱うとすれば、その利益を保護するため、更生計画の作成及び議決に際し、更生担保権者の組を分類してその一を譲渡担保権者の組と定めるべきである。
本件においては、訴外更生会社の手続中、右の取扱いをしていないから、右更生計画は、控訴会社に対しては何らの効力を生じないといわなければならない。
三、被控訴人らは答弁として次のとおり述べた。
(一)控訴会社代理人主張の請求の原因事実中(一)ないし(三)の各事実は認める。
(二)(1)控訴会社の訴外更生会社に対する本件債権を担保するため、訴外更生会社は、別紙第三目録記載の不動産に順位第一番の抵当権を設定し、同第一、第二目録記載の物作を譲渡担保に差し入れた。
したがつて、この抵当権と譲渡担保権は共同担保の関係に立つている。
ところで、控訴会社は、本件債権を訴外公庫から譲り受けると、昭和三五年三月一〇日前記裁判所に対し、本件債権金七二四万九、九四一円について、右抵当権及び譲渡担保権を更生担保権として届け出でた。
そこで、被控訴人らは、本件抵当不動産全部(別紙第三目録記載の不動産)を金一、〇四〇万一、五三〇円と評価し、同月二五日同裁判所で開かれた更生債権及び更生担保権調査期日で、控訴会社の更生担保権を被担保債権の全額である金七二四万九、九四一円と確定した。
ついで、被控訴人ら提出の更生計画案は、関係人集会で審理可決され、同裁判所は、昭和三五年一二月一九日右更生計画案を認可した。
同認可決定はその頃確定した。
これについて、控訴会社は、何らの異議も述べなかつた。
右確定した更生計画によると、控訴会社の更生担保権金七二四万九、九四一円は、昭和三六年一二月一九日から向う六年間毎年一回宛、均等に分割して支払われ、右完済まで本件抵当権は存続することになつている。
(2)なお被控訴人らは、本件抵当物件のうち宅地を金八七八万〇、七三〇円建物を金一六二万〇、八〇〇円に見積つたので、本件債権は充分担保され、残余の担保余剰価額については、控訴会社の別口債権(第二番抵当による被担保債権)の一部を、右価額の範囲内で、更生担保権として賄わせた。
この取扱いは、会社更生法一二四条の規定による。
(3)本件更生計画によると、本件抵当権と、工場抵当法二条による機械器具担保権が存続することになる。
後者は、権利者を訴外日綿実業株式会社とするもので、本件更生計画では、控訴会社の本件譲渡担保権は存続することにはなつていない。
(4)被控訴人らは、控訴会社に対し、最初の年賦金の弁済期日である昭和三六年一二月一九日最初の年賦金を支払い、第二回の支払期日である昭和三七年一二月一九日その支払いを用意している。
(三)控訴会社は、本件譲渡担保権にもとづき、その取戻しができないと考える。その理由は次のとおりである。
(1)控訴会社の主張する本件譲渡担保権は、さきにも述べたとおり本件抵当権と被担保債権が同一であり、共同担保の関係にある。
しかも、控訴会社の右更生担保権は、抵当不動産の価額により、優に担保され、なお余剰価額まで生ずる程である。
そして、不動産抵当権により被担保債権の全額が更生担保権として更生計画上認可決定を受けたのであるから、控訴会社の債権はこれにより充分保護された。
したがつて、共同担保の関係にある本刊譲渡担保物件は自然と債権担保としての拘束から免がれたとしなければならない。
更生計画に定められた事項は、控訴会社のために、かつ控訴会社に対し効力があり(会社更生法二四〇条)、更生計画によつて認められた権利を除き、控訴会社は、すべての更生債権及び更生担保権について、その責を免れ、会社の財産上に存した担保権はすべて消滅する(同法二四一条)。
したがつて本件では、控訴会社は、更生担保権全額を昭和三六年一二月一九日から向う六ケ年間に平分に年賦崩済を受け、弁済完了まで本件抵当権が存続するという更生計画で認められた権利を除き、本件譲渡担保権などの権利はすべて失つたことになる。
なお、被控訴人らは、控訴会社の本件譲渡担保権の届出でに対し、譲渡担保権の組を設けて、その利益保護をはからなかつたが、それは、本件抵当不動産で本件債権の全額の優先弁済が受けられる結果、右譲渡担保権を更生担保権として処遇する必要がなかつたからである。
(2)控訴会社は、会社更生法六二条を盾に主張の取戻権を行使するというが、単に被担保債権が弁済遅滞に付されたことだけでは、まだ必ずしも制限なしに取戻権の行使が許されるものではない。
そのわけは、右述のとおり、本件譲渡担保権が、不動産抵当権と共同担保の関係にあり、後者について、債権全額の弁済が更生計画で定められ、そのため本件譲渡担保権が消滅したからである。
会社更生法六二条の解釈に、破産法八七条の学説判例を引用して類推することは、仮に一般論として許されるにしても、具体的に、本件事案には即さない議論である。
(3)譲渡担保権者が更生債権者でありながら、更生手続によらないで、取戻権を行使して弁済を受け得るとすることは、会社更生法一一二条の規定に牴触することが明らかである。
更生手続においては、破産手続と異なり、更生担保権者もその手続に参加させられ、控訴会社も、現に、本件更生手続に参加しているから、控訴会社はこれにより制約を免れない。
控訴会社がいうように、何らの制約を受けないで、取戻権の行使ができるものであるなら、譲渡担保権者は、全く無拘束のまま利益を享受することになる。
しかし、これは、会社更生法の体系と理念に反し到底是認できない。
(4)仮に、控訴会社の取戻権の行使を認め、本件譲渡担保物件を換価処分して被担保債権の弁済に充当することができるとすると、控訴会社は更生却保権の弁済のほか、右処分により二重の弁済を受け、過当の優先的取扱いを受けることになる。
しかしこれでは、会社更生法の意図する事業の維持、更生はもとより、債権者間の利害調整が期待できなくなる。
控訴会社は、本件譲渡担保権と不動産抵当権を得ている以上、他の債権者より優位に立つても当然の帰結だというが、それは、更生計画が認可決定され確定しても、両権利は何らの消長も来さないことを前提にしている。
しかし、本件のように両権利が共同担保の関係に立ち、その一部について債権全額の弁済方法が更生計画において定められたときは、これにより、会社財産の上に存在した従来の担保権は反対の定めのない限りすべて消滅し、計画に従い、権利の内容は変更されたとしなければならない。
控訴会社は、本件譲渡担保物件の引渡しを受けて換価し、これを本件債権の一部に弁済充当すると、更生担保権の額はその分だけ減ずるから、不当に利得する結果は生じないともいうが、控訴会社の本件譲渡担保物件に対する引渡し請求権の行使は、更生担保権届出で前ならば、とも角、届出で後、殊に、更生計画認可決定確定後の今日に及んでは、会社更生法二四二条により許されない。
(5)会社更生は、その申立てに始まり、一連の段階的手続が順序を追つて進められるのである。
したがつて、各段階の法律効果を維持しながら後続手続に進展するものであるから、先行既発の手続的実体的法律効果を変更又は消滅させるような行為は、会社更生の手続上許すべきではない。
控訴会社の本件取戻権の行使は、正に、右に牴触し許されないとしなければならない。
(6)控訴会社には、本件更生手続について、各段階の法定手続に対し、法定の異議権行使の機会が充分与えられていた。
それにも拘らず、控訴会社は一度も異議の申立てをしなかつた。
したがつて、今となつて、本件更生計画が無効であると主張することは許されない。
第三、証拠関係(省略)

理由

一、控訴会社主張の請求の原因事実中(一)ないし(三)の事実及び被控訴人らの答弁事実中(二)の(1)の事実のうち本件譲渡担保権を更生担保権として届け出でたことをのぞくその余の事実はいずれも当事者間に争いがない。
二、右争いのない事実や、成立に争いのない甲第四号証、同第六号証、乙第一ないし同第四号証と弁論の全趣旨を総合すると次のことが認められる。
(一)控訴会社は、昭和三五年一月三〇日訴外公庫から、訴外公庫の訴外更生会社に対する元利金合計金七一四万四、三四八円を、別紙第三目録記載の不動産に対する抵当権(順位第一番)と、同第一、第二目録記載の物件に対する譲渡担保権とともに譲り受けた。
訴外公庫は、被控訴人Aに対し、同年二月六日に到達した債権譲渡通知書により、その旨の通知をした。
(二)控訴会社は、同年三月一〇日京都地方裁判所舞鶴支部に対し、更生担保権届出書を提出した。
それによると、債権は元利金合計金七二四万九、九四一円(うち元金六六〇万円)で、それについて、担保権の目的として、右第三目録記載の不動産に第一番抵当権と、右第一、同第二目録記載の物件に譲渡担保権のあることの記載がある。
(三)被控訴人らは、控訴会社の右届出での債権を、右抵当権と譲渡担保権とで担保された更生担保権として取り扱つたが、譲渡担保権の組を作るなどして特別の配慮はしなかつた。
(四)前記裁判所で、昭和三五年三月二五日午前一〇時に開かれた訴外更生会社の更生債権及び更生担保権調査の期日で、訴外更生会社の管財人、更生債権者及び更生担保権者は、控訴会社が届け出でた本件抵当権によつて担保される金七二四万九、九四一円を全額更生担保権とすることに何ら異議がなかつた。
(五)被控訴人らは、更生計画案で、控訴会社の右更生担保権全額を、本件更生計画認可決定のあつた日の翌年の応当日を初回として毎年一回宛六回に均等分割弁済することとし、その全額の弁済があるまで、本件抵当権は存続することにした。
右更生計画集は、昭和三五年一二月一九日前記裁判所で認可決定された。
(六)本件譲渡担保物件について、日綿実業株式会社の工場抵当法二条による根抵当権が設定されていたので、本件更生計画で、同会社のため、右根抵当権は存続するものとされた。
しかし、右第一、第二目録記載の物件に対する本件譲渡担保権の存続は認められなかつた。
以上のことが認められ、右認定に反する証拠はない。
三、そこで、まず一般的に、会社更生法上譲渡担保権は取戻権の基礎となりうるかどうかについて判断する。
(一)譲渡担保は、判例法上認められた債権担保制度で、債務者が弁済期を徒過したときにおける担保権の実行方法の定め方により、普通の場合と特別の場合に大別される。
前者は、弱い譲渡担保と称せられ、清算を伴う譲渡担保であつて、賃務者が、弁済期日に債務を履行しないとき、債権者は、目的物を任意に売却処分してその売得金を、又は目的物を評価して自己の完全な所有とし、その価額を、元利金に充当し、不足があれば、債務者の一般財産に対して請求できる一方、残額があれば、これを債務者に返還しなければならないものである。
したがつて、債務者は、たとえ遅滞に陥つても、債権者が売却処分するまでは、又は評価して清算するまでは、元利金を弁済して目的物を取り戻す権利を失わない。
これに対し、後者は強き譲渡担保と称せられ、清算を伴わない譲渡担保であつて、債務者の遅滞とともに、当然目的物は完全に債権者の所有に帰するとともに、債務は消滅し、債務者は、目的物の返還を請求する権利を失うことが特約された場合である。
後者すなわち強き譲渡担保が特約せられ、弁済期日の経過により、債権者がその目的物の所有権を完全に取得し、更生会社の債務も消滅しているときは、会社更生法上、格別問題となる余地はない。
譲渡担保が会社更生法上問題となるのは、前者すなわち弱き譲渡担保の場合である。
本件の譲渡担保について、控訴会社は、強き譲渡担保の言句を用いている個所もあるが、特に、さきに述べたような特約があつたことを強調するところはなく、むしろ、主張の全体的考察では、前述の弱き譲渡担保の主張と解され、被控訴人らも、これを当然のこととして主張しているから、本件の譲渡担保は弱き譲渡担保とするほかない。以下は、これを前提にして考察を進める。
(二)債務者が、債務を履行しないとき、債権者は、譲渡担保の目的物を売却処分するために、その交付を請求することができ、債務者が破産した場合においても、譲渡担保権にもとづき、破産法八七条により、その目的物の取戻権があることは格別異論のないところである。
ところで、債務者が、会社更生法の適用を受け、更生手続に入つた場合、譲渡担保権者である債権者は、目的物を破産法八七条と類似した会社更生法六二条の規定によつて取り戻すことができるかどうかについては、積極説と消極説とが考えられる。
破産手続は、債務者が経済的に破綻し、その弁済能力の欠乏により、総債権者に対する債務を完済することができなくなつた場合、債務者の全財産を管理換価して、総債権者に公平な金銭的満足を与えることを目的とした法律制度であり、会社の破産は、その事業の停止と企業の解体に導く。
これに対し、会社更生手続は、窮境にあるが、再建の見込みのある株式会社について、債権者、株主、その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的としており(会社更生法一条)、そのため会社更生法は、破産の場合破産手続によらないで別除権者として権利行使ができる、特別の先取特権、質権、抵当権、及び商法上の留置権を有するものに対しても、更生手続外で、その権利を行使することを許さず、権利行使には、更生担保権者として届出義務を課し(会社更生法一二六条)、更生手続に参加し、更生手続によつてのみ、その権利を行使させることにしている(同法一一二条)。
一方一般に優越権のあることが承認されている租税債権について、会社更生法は、一定の範囲で一般の債権よりも優越的措置を講じながら、会社更生の目的の前には、優越的地位に後退を強い、更生債権の一種としての地位を認めるに止まる(同法六七条、一一九条ないし一二二条、一五七条、二四一条など)。
しかるに、会社更生法は、六二条をしばらく別にすれば、譲渡担保権者について何らの規定を設けていないし、担保権者であるのに、これを更生担保権者として取り扱うものと認める、何らの手掛りも与えようとはしていない。
すなわち、更生担保権の種類を規定した同法一二三条に挙げられてないばかりか、更生債権者らの分類を規定した同法一五九条、更生計画案決議のための関係人集会における決議の方法及び可決の要件を夫々規定した同法二〇四条一〇五条にも譲渡担保権についてふれるところがない。
ここに特に留意しなければならないのは、会社史生法の定める免責と権利の変更の規定である。
同法は、二四一条を設けて、更生計画認可の決定があつたときは、計画によつて認められた権利のほか、会社に、すべての更生債権、更生担保権について、その責を免れさせ、会社の財産の上に存した担保権は消滅するものとし、二四二条を設けて、同決定があつたときは、更生債権者、更生担保権者及び株主の権利は、計画に従い変更されることにした。
これらの規定は、さきに述べた同法の目的達成のため設けられたもので、破産法には、権利変更の規定はなく、又会社更生法上の免責担保権消滅制度は、破産法上の免責制度(破産法三六六条の一二)と比較し、担保権についてまで届出でと特別の定めがないことを理由に、失権させる点で、極めて異例にして、かつ強力な免責担保権消滅制度であるといわなければならない。
会社更生法は、会社更生の理念と目的を実現するための法的手続を定め、権利に強い制約を加えた手続法である。
それにも拘らず、譲渡担保権について何らの明文がないし譲渡担保権の性質に照らし、明文を要しないほど判然としているというわけのものでもないことは多言を必要としない。
取扱い手続上困難と疑問を生ぜしめる点はともかく、譲渡担保権者を不安と去就に迷わせるものこれより甚しきはない。
譲渡担保権を有する債権者を単なる更生債権者として遇しえないことは明白である。
すなわち、一般の債権者に比し強力な優越的地位を保持する債権者であるのに、この優越的地位を無視し、債権者であるというただそのことだけから、何らの規定がないのに、これを、更生手続上、更生債権として更生担保権よりも劣位に置く至当性は全然考えられないからである。
むしろ進んで、譲渡担保権者は、担保権を有することに着眼すれば、更生担保権としての位置づけは、充分考えられ、あながち不当とはいえない。
むしろ、そうしないと、判例によつて認められた変態的な譲渡担保権を、更生手続の外に置くことになり、他の抵当権者らの更生担保権者に対し、全く均衡のとれない強力な地位を与え、会社更生の理念と衡平の観念に背致する結果になることが憂慮される。
しかし、この論は立法論としては格別、解釈論としては、その限界を超えるものと考えざるをえない。
会社更生法は、譲渡担保権を更生担保権と同様或はこれに準じて規定しているとみる解釈は、譲渡担保権の担保的機能にだけ重点を置いた考えに立つたものであり、会社更生法上の免責担保権消滅と権利変更の各制度に思いを到すとき、譲渡担保権について、実定法上の明文が存しないだけに、その解釈をとることに極めて慎重ならざるをえないものを感ずる(変態的担保であれば、なおさら特別の規定を必要とする。
その点は租税債権以上のものがある。)。
元来、譲渡担保権は、経済機能的には担保権であるが、法形式上は所有権の譲渡である。
すでに所有権が更生財産から逸出していることに着眼すれば、取戻権を規定した同法六二条がある。
譲渡担保権の法形式からすれば、同条の趣旨目的に極めてなじむ性質を有する。
しかも、同条は譲渡担保権を除外するとは定めていないばかりか、同条が、破産法八七条と同じ体裁であることは、譲渡担保権について、更生担保権の規定の準用ないしは類推適用を一層はぱむものがあるといわざるをえない。
<要旨第一>はたしてそうだとすれば、一般に会社更生法上、譲渡担保権は、会社更生法六二条に定める取戻権であつ</要旨第一>て、更生手続外で、その行使をすることが認められていると解するのが相当である。
したがつて、また譲渡担保権者は、同法一一二条、二四一条の適用のらち外にあるといわなければならない。
(三)右のように解しても、譲渡担保の目的物が、手形や、その他有価証券通常の動産など更生会社の企業の維持に格別必要でない財産の場合は、問題を生ずることが少ないであろう。
しかしながら、もし譲渡担保の目的物が、工場の土地建物、機械器具など更生会社の企業の維持に欠くべからざる重要な財産であつて、しかも、譲渡担保権者の理解と協力がえられないときは、困難な事態に逢着するであろうことを認めざるをえない。
しかし、それは立法の不備でやむをえないものといわなければならないが、取戻権の行使も、権利行使の一般原則である信義則に従つてなすことを要し、濫用は許されないのは当然である。
自己の権利の主張に急な余り他を顧みず、そのため右取戻権の行使が、会社の更生維持に重大な結果を招来し、更生計画案の樹立が不可能になつたり、あるいは、更生計画が遂行不能に陥るような場合には、取戻しの成否によつて、取戻権者の受ける利害の大小軽重との比較において、場合によつて権利の濫用であるという評価を受け、取戻権の行使は制約されるであろう。
四、当裁判所は、さきに説示したとおり、譲渡担保権者は、その債権を届け出でることが必要でないと解するものであるが、譲渡担保権者が、積極的に更生裁判所に対し、その屈出でをした場合を考察する。
<要旨第二>(一)譲渡担保権は債権の担保的機能に着眼したときは、抵当権や質権と同じ作用を営むものであり、特にその更</要旨第二>生手続への参加を許さないとする規定はないのであるから、譲渡担保権者が更生手続に参加しようとする場合には、更生手続上、抵当権や質権に準じて取り扱い、譲渡担保権者が、更生裁判所に屈け出でた債権については、更生担保権としての処理がなさるべきである。
ただ、譲渡担保権の法形式である所有権に着眼したとき、譲渡担保権を抵当権や質権と同列に取り扱うのは、衡平上適当ではない。
したがつて、譲渡担保権者が更生手続に参加したときは、更生計画案の作成及び決議のため、更生担保権者の組の中に、譲渡担保権者の組を設け、その組に組み入れられて、抵当権や質権などの更生担保権者より、より優先的な地位が与えられるべきである。
譲渡担保権者のこの優先的地位を無視して作成可決された更生計画はその手続において、公正、衡平でないこと勿論である(会社更生法一九九条、二三八条参照)。
(二)そこで、次に、本件のように債権者が、一個の債権について、譲渡担保権と抵当権を併有している場合を考察しよう。
ある債権を担保するため、債権者がある不動産について抵当権を設定し、そのうえ同一もしくは異別の不動産又は動産について譲渡担保権を設定させ、両者を併有している場合、債権者は選択権を有し、いずれの権利を先に行使しようと、あるいは又、これを同時に行使しようと差支えなく、要は債権額以上には満足を受け得られないだけである。今場合を別けて考察する。
(1)債権者が債権を屈け出でるに当り、その担保として抵当権だけを更生担保権として届け出でた場合。
この場合は、前述のとおり譲渡担保権は更生手続のらち外にあり、会社更生法は別に届け出でることを要請しておらないのであるから、譲渡担保権を屈け出でなかつたことにより、失権の問題が生ずるいわれがなく、ただ後述のとおり、債権そのものを実体的に変更する更生計画が更生裁判所によつて認可決定されると、更生担保権者の権利が計画どおり変更される効果が生ずるので、この点で譲渡担保権者の被担保債権が実体的に変更され、譲渡担保権の行使も制約されることがある。
(2)債権者が債権を届け出でるに当り、その担保として譲渡担保権だけを届け出でた場合。
この場合の更生裁判所の取扱いについては、さきの四、の(一)で説示したとおりであり、債権者は、抵当権を更生担保権として届け出でた場合より、より優位な地位に置かれる。
しかし、抵当権はその届出でがないため失権するとしなければならない。
(3)債権者が、債権を届け出でるに当り、その担保としての、抵当権と譲渡担保権を更生担保権として届け出でた場合。
この場合更生裁判所は、抵当権について更生担保権者として取り扱うのは勿論のこと、更生担保権者の組の中に譲渡担保権者の組を設けて、これにも債権者を組み入れ、その利益の保護をはかるべきである。
一例を挙げると、債権額が金一〇〇万円で、抵当不動産の価値が金二〇〇万円、譲渡担保物件の価値が金五〇万円であるとしたとき、債権者は、債権額金一〇〇万円のうち同物作の価額に相当する金五〇万円については、譲渡担保権者として最優先的地位を主張し、残債権額金五〇万円については、抵当権者として満足をはかることは許容されるのであつて、債権者の譲渡担保権者としての利益を無視し、抵当権者としての地位しか認めないことは、到底首肯できない。
五、(一)本件について観察すると、さきに認定したとおり、控訴会社は、昭和三五年三月一〇日、京都地方裁判所舞鶴支部に対し、本件債権について、抵当権と譲渡担保権の両方を届け出でたのであるから、これは、右の四、(二)、(3)の場合に該当するわけである。
したがつて、更生裁判所は、さきに説示したように、譲渡担保権者の組も設けて、控訴会社をそこにも組み入れて、その利益の保護をはかるべきであつた。
ところが、さきに認定の事実からすると、控訴会社は、本件債権に対し抵当権と譲渡担保権を有するものとはされたが、譲渡担保権者としての組別の利益は与えられず、しかも、本件抵当権は債務の全額弁済があるまで存続するものと特に定められたが、本件譲渡担保権については、その特別の定めがなされないままの更生計画が、同裁判所において認可決定された。
しかも、この認可決定は控訴会社ら利害関係人が、会社更生法二三七条による抗告の申立てをしなかつたため、確定したことは控訴会社の自認するところである。
<要旨第三>そうしてみると、同裁判所の更生計画認可決定は、控訴会社を譲渡担保権者として特別の取扱いをしなかつ</要旨第三>た点において、瑕疵のあることは否めないところであるが、しかしそのような瑕疵のある計画も認可決定が確定した限り、有効であり、会社更生法に規定する種々の効果(同法二四〇条ないし二四七条)を有することは当然である。
したがつて、譲渡担保権者は、更生手続に参加する限り、その譲渡担保権が更生計画によつて存続する権利として認められないときは、会社更生法二四一条によつて失権すると解するのが相当である。
そのわけは、債権者は、譲渡担保権を、更生裁判所に届け出でる必要がなく、その届出でをしなくても譲渡担保権は失権しないが、譲渡担保権者が積極的に更生手続に参加して自己の利益の保護をはかつたときは、段階的更生手続に法定された効果も当然譲渡担保権者に及ぶとしなければ、譲渡担保権者は、自己の懇意によつて、自己に利益な効果のみを収め、自己に不利益な効果は免れることができるといつた不都合が生ずるからである。
したがつて、本件においても、控訴会社の本件譲渡担保権は、本件更生計画に何らの定めがないまま認可決定されたため、会社更生法二四一条により消滅したとするのほかない。
六、控訴会社は、本件譲渡担保権が取戻権になるとして種々法律上の主張をする。
すでに説示した理由によつて、その見解には従いえないのであるが、なお少しそれについて判断を加える。
(一)控訴会社は、会社更生法五四条二号によつて、更生管財人は再び木作譲渡担保物件を譲り受けることによつて、会社の更生をはかることができると主張している。
同条の規定は、更生管財人の会社財産の管理処分権のうち、比較的重要な行為については、更生裁判所の裁量によつて、許可を要するものとすることができることを規定したにとどまり、更生管財人は、同条二号によつて、財産譲受けの権利義務を与えられたわけではない。
いわんや譲渡担保権者が、同号により、更生管財人に対し譲渡担保物什を譲り渡さなければならない義務を課されたものでは全然ない。
したがつて、この規定のあることから、直ちに更生管財人が本件譲渡担保物件譲受けの目的を達しうるものではない。
(二)控訴会社は、取戻権を肯認しても、二重過当の優先弁済を受けるわけではないから、取戻権の行使を許容すべきであると主張している。
しかし、譲渡担保権による取戻権の行使によつて二重過当の優先弁済を受けるかどうかは、取戻権を認められた場合に関する。
それ以前に取戻権の有無そのものが決せられていなければならないのであるから、この主張は当らない。
(三)控訴会社は、更生担保権について更生計画が認可決定されても、譲渡担保権について、特に更生手続外で合意のない限り消長を及ぼさないと主張している。
譲渡担保権者が、更生手続に参加した場合のことは前述したとおりであるが、更生手続に参加を欲しない譲渡担保権者と更生管財人との間で、譲渡担保権の行使について、合意をすることは会社更生法の理念に反しないと考えられるから差支えなく、右合意が成立したときは、当事者双方はその合意に拘束されることは当然であり、同法上、譲渡担保について何らの規定のない点から、あるいは、そのような合意に達成してこの問題を処理するのが得策であるともいえる。
しかし右認定のとおり、控訴会社は更生手続に参加し、その結果会社更生法二四一条によつて、訴外会社に対する本件譲渡担保権は消滅したのであるから、右主張は全然当らない。
(四)控訴会社は、本件更生手続中の関係人集会において、議決権を行使するに際し、譲渡担保権者である控訴会社に対し、更生担保権者より、より強い議決権を与えないで、更生担保権者として取り扱つたから、会社更生法上の「更生計画の公正衡平の原則」に反し、更生計画は、本件譲渡担保権者に対し無効であると主張している。
このことについてはさきにも説示したとおり、控訴会社の本件譲渡担保権について存続する旨の特別の定めの一ない更生計画について更生裁判所の認可決定があり、それが、控訴会社ら利害関係人の会社更生法二三七条による抗告がなかつたため確定した以上、同法二四一条の規制を受けるほかなく、控訴会社は主張のような理由で更生計画の無効を争えないとしなければならない。
七、控訴会社代理人の事実上の主張について判断する。
控訴会社は、譲渡担保権を更生担保権として届け出でても、取戻権の行使には何らの影響がないと誤信して、その債権届出でをしたから、右債権届出では、要素の錯誤により無効であると主張している。
更生裁判所に対する債権の届出では、訴訟行為であるが、一般に訴訟行為については、それが要素の錯誤により無効であるとの観念に親しまないし(例外として自白の撤回について要素の錯誤の観念を導入することを判例法は承認している。)、そればかりか、本件に顕れた全証拠を精査しても、控訴会社は右債権届出での際、取戻権の行使ができることを、特にその要素としたことが肯認できる証拠は見当らない。
したがつてこの主張は採用に由ない。
八、(一)既述のとおり、当裁判所は、債権者が更生裁判所に譲渡担保権を届け出で、更生手続に参加したときは、それにより、更生手続上譲渡担保権も種々の効果を受けるとの立場を採るものであるが、会社更生法上譲渡担保権を届け出でる義務がないという基本的視点を貫くときは、譲渡担保権者は、譲渡担保権の届出で自体によつて何らの効果も不利益も受けないとの見解も成り立ちうる。
その見解に立つて本件を観察してみる。
この観点からすれば、控訴会社の有する本件譲渡担保権については、更生計画において存続する旨の特別の定めはなされていないけれども、このような特別の定めの有無にかかわりなく、控訴会社は、依然本件譲渡担保権を有するものとしなければならない。
しかしながら、控訴会社は一個の債権について共同担保権を有するもの、すなわち会社更生法に服しない右譲渡担保権によつて担保される被担保債権と、会社更生法の制約に服しなければならない本件抵当権によつて担保される被担保債権とは同一不二のものであること、その被担保債権は更生計画によつて昭和三六年一二月一九日から六年の年賦に変更され、右更生計画の認可決定は確定したことはすでにみたとおりである。
譲渡担保の基本たる被担保債権が、他の理由と原因によつて減額、期限の猶予など権利に実体的変更を加えられたとすれば、その同一の債権の弁済の担保を目的とした譲渡担保権も、これに伴つて当然その範囲で制限を受けると解するのが相当である。
反対にこれと切りはなして何らの変更も受けないものとし、たとえば変更前の弁済期日の徒過を理由に、直ちに譲渡担保権者が、その権利を行使することが許されていると解する至当性はない。
(二)したがつて、本件では、控訴会社の譲渡担保権の被担保債権が昭和三六年一二月一九日から六年の年賦に変更された結果、譲渡担保権の行使も、そのとおり制約されるとするのほかない。
(三)もとより更生管財人が更生計画どおり、その履行をしないとき、債権者は、履行期が到来した分割弁済金の弁済に充当するため、その範囲で譲渡担保物件の取戻しが許されるとしなければならないが、しかし、本件では、被控訴人らは、昭和三六年一二月一九日控訴会社に対し、最初の年賦金の支払いをすませ、昭和三七年一二月一九日が支払期日である第二回年賦金の支払分も、被控訴人らにおいて用意しているから(このことは控訴会社が明らかに争わないから自白したものとみなす。)、控訴会社は、まだ本件譲渡担保権の行使ができる段階に立ち至つておらないわけである。
九、むすび
以上の次第で、控訴会社は、本件譲渡担保権にもとづく取戻権により、本件譲渡担保物件に対し、その返還を請求することができないわけであるから、その行使としての控訴会社の本訴請求は失当であり、これと同趣旨の原判決は相当である。
そこで民訴三八四条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長判事平峯隆判事大江健次郎判事古崎慶長)
<記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾3添付><記載内容は末尾4添付><記載内容は末尾5添付>
第三目録
舞鶴市大字a小字bc番地のd
一、宅地弐拾壱坪五合四勺
右同所拾参坪六合七勺
一、宅地九百六拾参坪六合七勺
右同所e番地
家屋番号、同字第f番
一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建工場
建坪弐百弐坪六合

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